【完】黒蝶 -ふたりの総長に奪われて-
「いいよ、雫ちゃん。
準備がんばってたの知ってるし、ゆっくりしてな~」
「でも、」
「その分まつりにやらせるから。
ほらまつり、さっさと終わらせてこの後付き合えよ~。稜介が雫ちゃん送ってくんだから、お前今日空いてるだろ」
「………、」
優理が、有無を言わせることなくまつりを引っ張っていく。
それを何も言えずに見つめていたのだけれど、結局はまつりが折れたようで素直に咲ちゃんたちの後片付けを手伝っていた。
「………」
なん、か。
離れたところでこうやって見ていると、朝顔と彼岸花は似ているようで全然違う。朝顔はわたしにとって仲間の関係を築けているけれど、やっぱりここではあとから入った"姫"なんだと。
そう思うと、急に疎外感を感じる。
朝顔のみんなとだってはじめから仲間だったわけじゃないのに。
そう感じる理由なんて、最初から分かりきってるけど。
誕生日会なんてものを企画して一緒に楽しんでいる以上、滲む罪悪感があるのだって事実だった。
……そういえば、越からは特に連絡も来ていない。
わたしが大した情報を彼に送らない限り、彼からは特別コンタクトなんてない。
いま思えば、付き合いはじめはマメに関わりを持とうとしてくれていたように思う。
連絡手段がなくて朝顔に直接遊びに行っていたわたしより遅く来ることはあっても、越がわたしよりも先に帰ることは一度もなかった。
『この子、俺の彼女』
はじめて兼や静、ハルちゃんに会ったあの日。
迷うことなくそう言ってくれた越は、間違いなくわたしのことを好きでいてくれた。
でも、今は。
……いまは本当にわたしのこと、好きでいてくれているんだろうか。