【完】黒蝶 -ふたりの総長に奪われて-
Episode.1
・朝顔と彼岸花
◇
「こんな時間に、何やってんの?」
わたしが越と出会ったのは、中学2年生の時だった。
パーカーのフードを深く被って、マスクで顔を半分隠して。夜中の繁華街にいたわたしは、その声にぴくりと肩を震わせた。
真夏にこんな変な格好をしてる人に、普通は話しかけたくないと思う。
まさか警察?とおそるおそる顔を上げて、思わず息を呑んだ。
「、」
シルバー……いや、透き通りすぎてもはや白みたいな。
白銀の細い髪に、細身の長身。美しさの化身みたいなその男は、かがみ込むわたしを真っ直ぐ見下ろしてる。
「シカト?」
薄くピンク色をしたくちびるが、その美しさとは裏腹な冷たい言葉を放つ。
ハッとして「いえ」と否定するけれど、暑さとは別の理由で汗が流れるのを感じた。
「どうして、声を……?」
「はあ? だってお前、学生だろ?
高校……いや、下手したら中学生じゃないの?」
「そう、ですけど、」
「いま何時か知ってる? 夜中の2時。
とっくに補導時間超えちゃってんの。別にお前が補導とかされようとどうでもいいけど、変な男とかに捕まってもし暴行でも受けたら?」
「、」
「まあ正直お前が男にナニされようと、俺にはまっったく関係ないけど。
迷惑なんだよね、俺らのナワバリでトラブル起きんの」
俺らのナワバリ……?