【完】黒蝶 -ふたりの総長に奪われて-
「まつりって、お人好しだよね」
「なんでだよ」
「なんでも。
幼なじみの俺が言うんだから間違いないよ」
ほんと、馬鹿みたいにお人好しでさ。
自分だけがぬるま湯に浸かったような甘い世界で生きてると知ったのは、それから数日後のこと。──俺らに絡んできた先輩たちが、仲間を引き連れてきた時だった。
「よお、舘宮。
こないだはよくもまぁ好き勝手してくれたなぁ」
「っちょ、まつり。マズいよ」
前回と同じように、放課後、学校からすこし離れたところで絡まれた。
こっちは俺とまつりのふたりだけ。対して相手は、怪我の残るソイツらを含めて、15人近く。しかも、バットなんかを持ってるのが見える。
「……それでまたやられに来たのか?」
「っちょ、」
なに煽ってるんだ……!
「ああ?」
ああほらっ、相手キレてるじゃん……!
いくら俺の信頼してるまつりでも、この人数をひとりで相手するなんて無茶だ。俺なんて、頼りにならない。──誰か、助けを。
「テメェ、
多少喧嘩できるからって調子乗ってんじゃねえぞ」
端にいた、いかにも"チンピラ"って感じの男が、まつりに掴みかかろうとする。
咄嗟に「まつりっ」と声を上げたけれど。