【完】黒蝶 -ふたりの総長に奪われて-
胸ぐらをつかまれても、いつも通りの表情をまったく崩さないまつり。
そして「せっかく前回は喧嘩買ってやったのに」と、わざとらしくため息をついた。
「あ? おまえ、」
「で、お前ら誰に手出そうとしてんの?」
ぴたり。
チンピラの動きが、その場に届いた声で止まる。
「ッ、ひ、に、西野……!」
ザッと先輩たちが場所を譲り、奥に隠れていたらしい人物の顔が見える。
西野 左助。周囲の人物にはあまり詳しくない俺でも知っているような、この地域で"喧嘩が強い"とウワサの高校生だ。髪は黒いけど、ネクタイもシャツも絶妙にゆるい。
そんな人が、なんでここに……?
「その汚ねぇ手離せよ。
新入生の制服が使いモンにならなくなるだろうが」
口悪いな。
……でもこの感じ、助けてくれるっぽい?
「なあ? まつり」
不敵に口角を上げて、歩み寄ってきた西野さん。
呆気に取られているチンピラの手をまつりから引き剥がしたかと思うと、そのチンピラの胸ぐらを掴み返した。
「ま、まさか、」
「ああ? コイツ、俺の"かわいい後輩"」
「っ、わ、」