【完】黒蝶 -ふたりの総長に奪われて-



先輩が、まつりを顎で指す。

その瞬間、チンピラを含むヤンキー軍団の顔色が瞬く間に悪くなっていった。……なん、だ?



「わ?」



「悪い! 用事思い出したから帰るわ!」



「あ? ンな言い訳通じるわけねえだろ」



「ヒィ……!」



15人もの集団が、たったひとりの存在に気圧されている。

俺はただそれを黙って見つめていると、乱雑に舌打ちして「もういい」と西野さんは吐き捨てた。



「次やってみろ、地の果てまでも追い掛けてやる」




……いい人なんだよね?

どうにもさっきから物騒なことしか口にしてないように見えるけど、いい人なんだよね?



「……わざわざ呼び出して悪い」



「いーや。お前の頼みならしゃあねえ」



すっかりヤンキー軍団がいなくなり、ようやく口を開いたまつりは一番に西野さんに謝った。

彼もまつりのことをかわいい後輩って言ってたし、呼び出したってことは、結構親しい仲ってこと?



「稜介。左助のことは知ってるな?」



「あ、うん……うわさ程度だけど……」



「"彼岸花"の頭張ってるって話は?」



< 176 / 295 >

この作品をシェア

pagetop