【完】黒蝶 -ふたりの総長に奪われて-
彼岸花。──聞き覚えがあった。
というのも、割と頻繁に校内でも噂になる上にお得意のネット検索で地元の情報を見ていたら、何度も見た字面だった。
俺らの地元にある、暴走族。
関東の南側を仕切っているらしい、それ。
そのトップが……西野さん?
「ま、俺も先代から最近引き継いだばっかで大したことしてねえんだけどよ。西野 左助だ。
よろしくな、稜介。まつりの幼なじみなんだろ?」
「はあ、どうも……」
「まつり。
お前が説明してねえから、俺がものすごい訝しげな目で見られてんじゃねえか。お前が彼岸花のメンバーだって話、なんでしてねえんだよ」
え?
「彼岸花のメンバー?」
誰が? まつりが?
……まつりが、彼岸花の、メンバー???
「ほら、困惑してるじゃねえか」
「……言うつもりなかったんだよ」
「大事なモンくらい、
ひとりで守りたかったんだもんなぁ?」
「………」
「めずらしくガキみてえな表情してんじゃねえか」