【完】黒蝶 -ふたりの総長に奪われて-
まつりは、俺が知らないうちに暴走族に入ってたってこと?
たしかに彼岸花は悪いウワサが立つような組織じゃないって、SNSで見た記憶があるけど。……でも。
「まつり。稜介は納得いかねえってさ」
「……稜介」
「なんで黙ってたの?」
「………」
「もっとはやく言ってくれたらよかったのに」
拳を、ぎゅっと握り締める。
数日前に俺をひとり逃がして先輩たちを相手にしたまつりの余裕は、彼岸花に所属していたからこそなのかもしれない。その優しさに甘えた俺が言えることじゃないけど、もし、まつりに何かあったら。
「……言ったらお前心配するだろ」
「するよ。幼なじみなんだから」
「だから言わなかったんだよ。
まあ……今回の件に関しては、さすがに俺ひとりじゃ無理だと思って左助に頼ったんだけどな」
ジッと、西野さんを見つめる。
それに気づいた彼はふっと口元をゆるめて、俺の頭をくしゃっと撫でた。
「言いてえことがあるなら言えよ」
「……俺も、彼岸花に入れてください」
「稜介、」