【完】黒蝶 -ふたりの総長に奪われて-
◆
「なー稜介。頼む!勉強教えてくれ!」
「えー……」
「なんでもしてやる!」
「なんでも?」
「や、それは嘘だわ。なんでもは取り消す。
……まーでも、メシ奢るくれーのことはする」
突然チームに入った俺を、彼岸花のメンバーはみんな優しく迎えてくれた。
一から体力づくりに付き合ってくれる先輩もいたし、「喧嘩はどう相手を落とすかじゃなくて、いかに自分のダメージを減らすかだ」なんて、基礎から喧嘩を教えてくれる先輩もいた。
彼岸花は、強さこそ圧倒的ではあるけど、人数がめちゃくちゃに多いわけではない。
同い年のメンバーも何人かいたけど、俺は相変わらずまつりと一緒にいて、快斗や優理と過ごすことが多かった。
快斗は俺が選ばなかった私立中学に通っていて、まつりとは彼岸花で知り合ったらしい。
逆に優理のことは俺も知っていた。同じ中学だし、まつりと似たような意味で女の子たちによく絡まれてたし、何より本人も女好きだったし。
学校で話したことはなかったけど、優理も俺のことは知ってくれてたみたいで、すぐに打ち解けた。
優理の方が早かったけど、俺とほぼ変わらないくらいの時期に彼岸花に入ったんだとまつりから聞いた。
「いいよ。どれ? 見てあげる」
「サンキュー。マジ助かる」
快斗がペラペラと問題集を捲る。
これは俺の偏見だけど、進学校の問題集って、なんでこう分厚くて永遠にモノクロなんだろう。せめて差し色くらい入れてくれたら堅苦しさも少しは軽減するのに。
「快斗、また補習でも受けてんのかよ~」
「ちっげーよ!
補習受けねーために真面目に勉強してんだよ!」