【完】黒蝶 -ふたりの総長に奪われて-
面白いことを見つけたと言わんばかりの顔で近づいてきた優理が、案の定快斗にちょっかいをかける。
それに快斗が噛み付くと、途端に騒がしくなる。……うるさいとは思うけど、嫌いじゃないんだよね。
「この間の補習、
めちゃくちゃめんどくさそうだったもんな~」
「マジで勉強しなかった自分を恨んだっての。
自称進学校、クソめんどくせー」
「入学してまだ1年も経ってないのにねえ」
開かれた問題集を受け取って、「ああ、」と納得する。
よかった、俺のわかる範囲で。一応勉強はしてるし応用問題も解くことが多いから、これなら教えられそうだ。
「お。快斗勉強してんじゃねえか。
稜介、相変わらずお前は面倒見良いな。優理は、あんまりちょっかい出してやるんじゃねえぞ」
早速解説しようとしていたら、階段をおりてきた左助さんが声を掛けてくる。
6代目のトップを張る左助さんの信頼度はあまりにも高くて、みんな左助さんのことが大好きだった。
用事がなくても、常に声を掛けてくれる。
たまに喧嘩してるとか絡まれてるとかで、たまり場にいなかったりするけど。それでも、強くてみんなからの信頼も厚い左助さんは、憧れだった。
「めんどくせー。
左助さんどっか行くんスか?」
「ああ? 野暮用だよ。
お前が楽しみにしてるような喧嘩はねえ」
「チッ。着いていこうと思ったのに」
「舌打ちすんなクソガキ」
「へーへー」
……相変わらず、口はめちゃくちゃ悪いけども。