【完】黒蝶 -ふたりの総長に奪われて-
まつりと学校に行って、その足で放課後は彼岸花に。
そんな生活を半年以上続けていたある日。──それは、突然起こった。
「ただいま」
可もなく不可もなく、よくあるごく普通の一軒家。
それの玄関扉を開くと、玄関には見慣れない革靴が置かれていた。……なんか、いやな予感がする。
サイズから考えて、中にいるのは男性。
そしてそんな高そうなものを身につけている相手に、俺は心当たりがあるわけで。
「おかえりなさい」
「いま何時だと思ってるんだ」
リビングの扉を開くと、トレーに乗せたティーカップを、母さんがテーブルに置くところだった。
そしてそれを差し出す相手はソファを陣取り、いかにも不機嫌な様子で俺のことを見ている。──俺の、父親。
「……何時って、19時ですけど」
「口答えするな。こんな遅くまで何をしている」
何を、ね。
……友達と遊んでました、なんて通じないんだろうな。
「……稜介。お前には本当にガッカリだ」
はあ、と大きなため息をつく父さん。
その手で取り出してテーブルにばらまかれたものは、明らかに盗撮と思われる俺の写真だった。
「なんだ、この頭の悪そうな集団が出入りしている場所は。
私は、お前にそんな遊びをさせるために進学先の変更を許したわけじゃない。分からないのか?」
ギリ、と奥歯を噛み締める。
彼岸花のことを悪く言われるだけで、仲間のことをそんなふうにぞんざいに扱われるだけで容易く腹が立ってしまうほど、俺にとっては大切な居場所なのに。