【完】黒蝶 -ふたりの総長に奪われて-
「今すぐこの輩とは縁を切れ。
言うことが聞けないなら、お前にこれ以上自由は与えない」
どうしてもうひとつの家庭を持っておきながら、そんな父親ヅラができるんだろう。
愛人との間に子どもが出来てしまっただけで、大して親という責任感なんて無いくせに。
「拒否します」
「なんだと?」
この人は、自分の都合の悪い存在を排除したいだけだ。
愛人や隠し子がバレたら自分の経歴に傷がつく。ましてや、その隠し子が暴走族のメンバーだなんて知られたら、信頼は瞬く間に地に落ちていくだろう。
それが困るから、気に掛けるという表向きの監視をしてる。
普段から俺が何をしているのかは、この人に筒抜けなんだろう。
でもそんなの、俺の知ったことじゃない。
「拒否しますって言ったんです。聞こえませんか?」
「そうか。それなら、今後一切の養育費は払わない」
「、」
ピクリ。指先が、震える。
……なに言ってるんだ、この人は。
「期限を三日やる。それまでに答えを出せ。
もしお前が今までと変わらない生活を続けるというのなら、今後の養育費は支払わない。話は以上だ」
俺に選択肢なんてものは用意されていなかった。
この人から振り込まれている、俺の養育費。
それがどれだけ家計の支えになっているか、ほとんどを家で過ごす母さんのことを考えたら分かることだった。