【完】黒蝶 -ふたりの総長に奪われて-
「……何の用?」
俺は仲間と離れたことを後悔してないわけじゃない。
1年以上経った今でも、不意に思い出すんだよ。
「そんな怖い顔をするな。
今日はただ、お前と進路の話をしに来ただけだ」
「………」
「もう決めているのか?」
ああ、私立中学を勧めてきたあの時と同じやつか。
そういや快斗は元気だろうか。俺の代わりに、誰か快斗に勉強を教えてくれる人はいるだろうか。
……いるか。
別に俺じゃなくたって、この世はまわるんだから。
「まだ決めてないよ。
進路希望も何度か出してるけど、教師に何も言われないようにそこそこのことしか書いてない」
「そうか。ならば、」
有名私立高の名前を出してくる父さん。
お決まりのそれに、なんだか怒る気にもなれない。
「うちの愚息が役立たずでなぁ。
お前の方がよっぽど優秀で利口だ、稜介」
「……そうなんだ」
もうひとつの家庭に俺と同じ歳の息子がいることは一応知ってるけど、そんな言い方はどうなんだろう。
毎日毎日こんなふうに高圧的にものを言われ、自由も与えてもらえない生活を送っているんだろうか。
……それなら、俺は愛人の子でよかったかもしれない。