【完】黒蝶 -ふたりの総長に奪われて-
父さんとの話を、なぜ優理が知っているのか。
確かに俺はついこの間、担任に「やっぱり進路替えたいです」と告げたところだけど。……見てたのかな。
「誰かさんが『何考えてんだろうな』ってボヤいてたからねえ」
……まつりか。
ってことは、母さんが白雪さんに話したんだろうな。
「別にいいでしょ?
元々中学も同じように言われてたし、従っておいたらスムーズに事が進むんだって気付いただけだよ」
「……おまえ、まつりと一緒にいるために無理やり押しきってまでここの中学通ったんじゃねえの?
そんな中途半端な気持ちでまつりのこと捨てていいのかよ」
「中途半端?」
どこが中途半端なんだ。
こっちは10年以上を一緒に過ごしてきた幼なじみさえ裏切って、仕方なく父親に従ったっていうのに。
「中途半端だろ。
だから左助さんもお前にあんな嫌味言ったんじゃねえの」
「っ、」
つっ、と胸が引き攣る。
なんでそんなこと言われなきゃいけないんだ。……俺だって、わざわざ彼岸花を離れたくなんてなかった。
そうしなきゃいけなかった。
じゃなきゃ誰も救えないって、そう思ったから。
「優理には分かんないよ俺の気持ちなんか」
「そりゃそうだろうよ。
逆にお前は俺の気持ちもまつりの気持ちも、左助さんの気持ちも分かるってのかよ」
「知るわけないじゃんそんなの、他人なんだから」