【完】黒蝶 -ふたりの総長に奪われて-
「誰かのこと守るために自分のこと犠牲にしてたら、いつか壊れるんだよ。
……まあ。母親人質に取られたんじゃ、どうしようもねえのわかるけど」
優理が、俺を見てふっと笑う。
さっきみたいな冷たさは無い、柔らかい優しさで。その瞬間、ぼろぼろと瞳からとどめなくこぼれ落ちていく涙。
「泣くんじゃねえよ~。
いいから早く、馬鹿みてえに優しい幼なじみに、"助けて"って伝えてこい」
「っでも、」
「なんであいつが彼岸花に入ったのか知ってんだろ~?
大事なもの、守りたいから。……お前のこと守りてえから、強くなろうとしてたんじゃねえの」
「っ……」
ああ、馬鹿なのは、俺だったのか。
自分を庇うのに必死で、まわりのことなんて何も見えてなかった。──そうだ。
中学に入ってすぐに先輩たちに絡まれた時。まつりは誰よりも先に、何よりも先に、俺のことを逃がしてくれたじゃん。
大事なものは、自分で守る。
そうなりたくて、俺は左助さんに彼岸花に入れてくださいと頼んだのに。
……いつまで経っても成長しないから、左助さんにもあんなことを言われるんだ。
「ああ、そうだ。
左助さん高3になったから、本来なら7代目の幹部候補がもう発表されてなきゃおかしいんだけどよ~」
「、」
「誰かさんが不在だから。
7代目の幹部候補、まだ決まってないんだよねえ」
「、な、んで、」
「そりゃまあ、理由は左助さんに聞いてみれば?」