【完】黒蝶 -ふたりの総長に奪われて-
抜けるって、言ったじゃん。
ましてや、もう一年以上、経ってるっていうのに。
「帰りを待ってるヤツがいるんだとよ」
「っ、どいつもこいつもお人好しばっかりだな、」
でもそんなお人好しが、俺は好きで。
まつりも、優理も、快斗も。左助さんも、彼岸花のみんなのことが、大切で。──何も、諦めたくない。
「まつり、どこ?」
「さあ?
今日は"国会議員に殴り込みに行く"とかで?朝から学校来てねえらしいよ~」
聞くが早いか、その場を駆け出す。
授業なんてもうどうでもいい。大事なものは、自分で守らなきゃ意味が無い。まつりが俺を、守ってくれたみたいに。──守りたいんだよ。
「まつり……!」
「……、稜介」
学校を抜けて、足をゆるめることなくたどり着いたのは、紛れもない俺の家。
中に飛び込めば、リビングには厳しい顔をした父さんと、その向かいの床に正座してるまつり。
「っ、はあ、なにやってんの……」
慌てて飛び出してきたから、息が苦しい。
「何って、話だよ」
「そんなこと聞いてるんじゃないよ……」