【完】黒蝶 -ふたりの総長に奪われて-



抜けるって、言ったじゃん。

ましてや、もう一年以上、経ってるっていうのに。



「帰りを待ってるヤツがいるんだとよ」



「っ、どいつもこいつもお人好しばっかりだな、」



でもそんなお人好しが、俺は好きで。

まつりも、優理も、快斗も。左助さんも、彼岸花のみんなのことが、大切で。──何も、諦めたくない。



「まつり、どこ?」



「さあ?

今日は"国会議員に殴り込みに行く"とかで?朝から学校来てねえらしいよ~」



聞くが早いか、その場を駆け出す。

授業なんてもうどうでもいい。大事なものは、自分で守らなきゃ意味が無い。まつりが俺を、守ってくれたみたいに。──守りたいんだよ。




「まつり……!」



「……、稜介」



学校を抜けて、足をゆるめることなくたどり着いたのは、紛れもない俺の家。

中に飛び込めば、リビングには厳しい顔をした父さんと、その向かいの床に正座してるまつり。



「っ、はあ、なにやってんの……」



慌てて飛び出してきたから、息が苦しい。



「何って、話だよ」



「そんなこと聞いてるんじゃないよ……」



< 190 / 295 >

この作品をシェア

pagetop