【完】黒蝶 -ふたりの総長に奪われて-
「咲耶は俺がちょうど彼岸花にいなかった間に入ってきてたらしくてね。
……まあ、それで今に至るって感じかな」
解決したかしてないかで言うと、結局したわけじゃないんだけど。
あれから父さんは強制はしてこないけど、たまに俺の生活態度に口を出してくる。この間なんて「高校生活はまともに送れているのか」と聞いてきた。
っていうか、それって。
「……愛情の受け取り方って、それぞれ違うから難しいわよね」
ただ俺のことを、気に掛けているように聞こえる。
……ま、どうせ自分のまわりに害悪なものが発生しないようにだろうけど。
母さんは相変わらず、白雪さんが羨ましいそうで。
かといって、別にどうってことはない。
まつりにも優理にも快斗にも、お礼を言った。
全員「別に気にすることじゃなくね?」って態度だったし、俺は本当に、周りが見えていなかったらしい。
快斗が勉強教えてくれって頼んできたみたいに、もっとはやく、誰かを頼ればよかった。
ただそれだけで、済んだ話だったんだよね。
「それにしても……ふふっ。
みんな昔から変わらず優しいのね」
「そうだね。どいつもこいつもお人好しだよ」
「そういう稜くんだって優しいじゃない。
みんなのそういうところが好きよ、わたしは」
……まつりが惹かれる気持ち、分かるなぁ。
好きってわけじゃないけど、愛くるしさというか、愛おしさというか。
小動物を見たら撫でたくなるような、そんな感覚に似てるんだよね、雫ちゃんへの好意って。彼女自身が絶妙に危うい色香を放つのが、余計タチが悪いんだけど。
「……こんなタイミングでこんなこと言うのあれだけどさ?
あんまり家に男を容易く入れない方がいいよ」