【完】黒蝶 -ふたりの総長に奪われて-
・7代目
◇
『──でねぇ、兼ちゃんは全然役に立たないしぃ。
静も我関せずで、鼓はひたすらうるさいしぃ。もぉ雫ちゃんのいない朝顔やだぁ。うっとうしいもんんん』
「ふふっ、ハルちゃんが今どんな顔してるか手に取るようにわかるわ。
越は元気にしてる? 最近連絡取ってないんだけど」
稜くんの誕生日が終わり、数日もすればゴールデンウィーク。連休のほとんどは彼岸花のみんなと過ごす。
……と思いきや、各々用事もあるようだから、毎日会うわけではない。
まつりが毎日会いたがってるけど断った。
だってあの人、いつ迫ってくるかわかったもんじゃないし。
連休初日。
夜になって電話をかけてきたのはハルちゃんで、自宅にひとりだったわたしはすぐにそれに応じた。
『えっちゃん?
……なぁんか、最近いそがしいみたいだけどぉ』
ハルちゃんと話してると、みんなの顔が頭に浮かぶ。
こうやって連絡を取るのは珍しくないから、そんなに寂しくはないんだけど。
『ってかぁ、えっちゃんなんてどうでもいいよぉ。
ハルね、明日は朝からイベント行ってくるんだぁ』
「あらそうなの? 何のイベント?」
『ふふん、それがねぇ』
ハルちゃんが大好きな、ビューティー系の動画配信者。
その人物のポップアップストアに行くらしい。お買い物金額で抽選ができて、当たれば本人と会えるようで、ハルちゃんがめちゃくちゃに燃えているのが電話越しにわかる。
……昔から好きだもんね、ハルちゃん。
『あーあ、雫ちゃんがこっちにいたら一緒に行けたのにぃ』
「そうね。でもたくさん楽しんできて?」