【完】黒蝶 -ふたりの総長に奪われて-
「そういえば、電話掛けてくるなんて何か用事?」
『いや?
……めずらしく落ち着かねえから、お前に何かあったんじゃねえかと思って掛けただけだ』
「とか言って、本当は寂しかったりして」
『………』
電話の向こうが、静かになる。
……あ、さすがにこれは調子に乗りすぎた?
『まあ。
お前の声が聞きたくて電話掛けてんだから、似たようなもんかもな』
ぽつり。
零されたそれに、とくんと心臓が揺らされる。心臓に悪いからストレートにそういうことを言うのはやめていただきたい。切実に。
「っ、生憎わたしには何もないし元気よ。
そろそろ本当に寝ようと思うから切るわね」
『ふっ……分かったよ。また連絡する』
「うん、おやすみなさい」
『おやすみ』
なんだか絆された感じが否めないけれど。
電話を終えると、電気を消してベッドに潜り込んだ。
目を閉じてみても、なぜかしばらく眠れそうになくて。
さっき聞いた、優しい『おやすみ』の声を思い出す。
そのせいで、余計に眠れないなんて。
馬鹿みたいな、話でしょ。