【完】黒蝶 -ふたりの総長に奪われて-



「ああ、ハルが新しい香水付けてたからそれでしょ」



確かに、ハルちゃんの選びそうな甘い匂いだ。

そしてわたしは、ハルちゃんが香水を付ける人であることも知ってる。……だけど。



「ここ来る前にたまり場寄ったから、それでじゃない?」



その発言は、絶対に嘘だ。



「そっか、ハルちゃんだったのね」



だってハルちゃんは、今日は朝顔のたまり場には行ってない。

朝からイベントに出掛けると昨日本人から聞いた。……それを知らない越は今日、朝顔のたまり場には寄ってないことが分かる。



なら、どうして嘘をつく必要があるんだろう。

わざわざ"ハルちゃん"の名前を出した理由は、何なんだろう。




……なんて、理由はひとつだ。

わたしに話したくない、隠したい"誰か"に会って、その足で越はわたしに会いに来たということになる。──それって、つまり。



「あのさ雫」



越の手が、わたしの頬に触れる。

親指で撫でるように触れられて、くすぐったい。



「な、に?」



「あいつと、もうやることやった?」



「あいつって、」



「舘宮」



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