【完】黒蝶 -ふたりの総長に奪われて-
普段、そんなこと滅多に言わないくせに。
注がれる愛に、揺らされる。──期待しない方が自分のためだと思いながらも、諦めずにはいられないわけで。
「雫」
「、」
「雫」
「ん、」
「……すきだよ」
何度も何度も名前を呼んでくれる越に、自分の気持ちなんてどうでも良くなってしまう。
手を伸ばして、同じ言葉を返すと越が抱き締めてくれるから、それだけで痛いくらいに幸せだった。
「……結局、どうして突然来てくれたの?」
ソファじゃ狭いからと、越にベッドに運ばれて。
しばらく経ってから、その腕の中で尋ねてみる。
わたしの髪を撫でていた越は、「気にしなくていいよ」なんて言ってくるけど、そう言われると余計に気になってしまうわけで。
「どうしてなの?」ともう一度聞いてみれば、越のくちびるが額に触れた。
「会いたかったから」
「……うそついてるでしょ」
「俺が嘘言ってるように見える?」
「うん、とっても」