【完】黒蝶 -ふたりの総長に奪われて-
スピーカーじゃなくとも漏れ聞こえてくる、鼓の声。
それを越が無理やり遮ったのだけれど、わたしにははっきり聞こえていた。"瑠里"って、言ったわよね?
『え、』
「雫のとこにいる。
だからトラブルはそっちで解決しといて」
『んなアホな!』
「真剣に言ってんのが分からないかな」
『っ、ほっんま自由人やな!?
くっそ、雫ちゃん一緒ならしゃあないし何とかするわ』
プツ!と勢いのままに切れる電話。
電源を落としてため息をつく越を見つめていれば、顔を上げた彼と目が合う。それから「何か言いたげだね」と言われるけど、察してくれないだろうか。
「……瑠里、って、だれ?」
「幼なじみ」
「越の?」
「うん」
「……鼓以外にも幼なじみいたの?」
そんな話、知らないんだけど。
結構長く一緒にいたし、越の家にだって何度も行ったことがある。……それなのに、隠すことなんて可能なんだろうか。
「いたけど黙ってた。
……言っとくけど、やましいことなんてないよ」