【完】黒蝶 -ふたりの総長に奪われて-



『今日まつりんいなくて、りょーくんとすぐりんも朝から傘下のチーム行っててさー!

かいくんはたぶんしずくん家辿り着けないと思うからぁ、ぼくしか出てこれなくって』



「そうだったのね。

近くに何か目印になりそうなものってある?」



咲ちゃんの大体の居場所を掴んで、道を伝える。

そうすれば数分後にはマンションにたどり着いてくれたから、ロックを解除して咲ちゃんを家に上げた。



……そういえば稜くんに、簡単に男を上げちゃだめだって言われたっけ。

まあでも、咲ちゃんだし。わざわざ心配して来てくれたみたいだし、門前払いするわけにもいかないわよね。



「おじゃましまーすっ。

あ、これ、お土産だよー。一緒にたべる?」



ニコニコ、笑って袋を差し出してくれる咲ちゃん。

中身を覗けば溢れんばかりのコンビニスイーツが詰め込まれていた。



……お菓子パーティー?




「まあ、しずくんが無事なのはわかってたんだけどねー。

もし本当に何かあったら、まつりんが動いてないわけないもーん」



「でもまつり、今日いないんでしょ?

連絡も特に何も来てないし、知らないんじゃない?」



「そんなことないとおもうよー。

まつりんがしずくんのこと放っとくわけないしー」



なんて言われてもね。

本当に好かれてるんだろうなとは思うけれど、どうしてまつりがわたしのことを好いてくれているのかは全くもって分からないし。そりゃあ、嬉しいけど。



「……でも、今日何してるのかも知らないし」



こぼしたそれは、まるで拗ねてるみたいだった。



はっとして顔を上げれば、咲ちゃんは「気になる?」とニコニコしながら聞いてくれる。

気になるわけじゃ、ないけど。



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