【完】黒蝶 -ふたりの総長に奪われて-
伝わってない……!
むしろふたりきりになりたくないんです!というわたしのアピールは、「わかった」とまつりが一言で済ませたことで砕け散る。
「っちょ、咲ちゃん……っ」
「だから言ったでしょ、モニター見なきゃだめだって」
にっこり。
笑った咲ちゃんは、わざとらしく「じゃあねー」と言いながらリビングを出ていく。わかった、わかったから置いてかないで……!
「、」
「雫」
咲ちゃんがいなくなると、途端に静かになる部屋の中。
呼吸の仕方すら忘れてしまったみたいに息ができなくなって、名前を呼ばれてようやくまつりを見るけれど。それ以上何か言う気はないようで、視線だけが絡む。
「な、んで、近づくの……」
ギシ、とソファが不穏に軋んだ。
目を逸らせなくて動けないわたしに近づいたまつりは、ふっと綺麗な笑みを浮かべる。
「お前がやたら意識してるからだろ?」
「っな、してないわよっ」
「そうか?」
伸びてきた手が、わたしの頬を撫でる。
ひんやり冷たい指先が気持ち良くて、そう感じるくらいには頬が熱くなっているらしい。
「……俺には、期待してるように見えたけど」