【完】黒蝶 -ふたりの総長に奪われて-
まつりの圧倒的なカリスマ性は、そういう場面でこそ発揮される。
稜くんだって、咲ちゃんだって、出逢えたことに後悔はないだろう。……じゃなきゃ、あんな風に仲良く過ごすことなんてないだろうし。
「あなたが7代目に選ばれたのは、
そういうみんなからの信頼があってこそ、でしょ?」
わたしの言葉に、まつりは一瞬黙って。
それから「お前、」と口を開いたかと思えば。
「本当にいい女だな」
「っ……なんでいまそれ?」
「思ったから言っただけだ」
今日も息を呑むくらいに美しく。
笑みを浮かべて「雫」とわたしを呼ぶまつり。そこに色気を使ってくる意味は何なんだろう。しまっておいた方がいいと思うの、その色気。
「はやく俺のもんになれよ」
「っ、な、りませんけど」
「ふぅん? まあ、それはそれで燃えるけど、」
あ、あれ? なんか、近くない?
さっき離れてくれたはずなのに、また近くない?
「──あんまり待たせると、俺は噛み付くぞ」
「っちょ、待っ……んんっ!」
塞がれたくちびる。突き放そうとした手を逆に掴まれ、逃げることも許されなくなった深いキスの中で。
視界の端にうつったふたり分のグラスは、見ないふりをしておくことに留めた。