【完】黒蝶 -ふたりの総長に奪われて-
「よく聞け雫。
いま幹部室には口の悪い6代目が来てやがる」
「あ゛?」
一瞬。まつりんが放った一言があまりにも低すぎて、倉庫内の空気が凍る。
その秀麗な顔を顰めるだけで迫力があるから、みんなの肩がぴくりと跳ねた。……怖いよまつりん。
「誰が寄越した?」
「ンなもん、左助が勝手に来たに決まってんだろ」
「……まさかとは思うが、千鶴は?」
目が合ってしまったからこくこくと頷けば、まつりんが余計にめんどくさそうな顔をした。
「千鶴?」と名前を反芻したしずくんに、「6代目の副だよ」と軽く千鶴さんの自己紹介をした彼は。
「絶対にあの男には近づくな。良いか?」
「え、ええ……なんで?」
「優理が健全に思えるくらいにクソ野郎だからだ」
「ひどいこと言うね、まーちゃん」
あ、千鶴さん来た。
左助さんも一緒だ。そして姿が見えただけでまつりんの機嫌が悪くなった。おかしいな、仲良いはずなんだけどね。
「……千鶴。雫に指一本でも触れたら、」
「はじめましてお嬢さん、遊佐 千鶴です。
女の子には大体ちーくんって呼ばれてます」