【完】黒蝶 -ふたりの総長に奪われて-
「どこで見つけたんだよ、そんないい女」
「教えねえ」
「同じ学校だっただけでしょ。
ちょっと、離してくれない? まつり」
「……今日当たり強ぇな」
「当たり前でしょ!?
昨日自分が何したか忘れて……っ、」
……ああ、昨日ふたりっきりで"何か"あったんだ。
でもまあそれを口走ったのが、全員が聞いているこの空間だとマズいことに雫ちゃんは気付いたらしい。
慌てて口を噤むけど、まつりんはさっきまでの不機嫌が嘘みたいに心底楽しそうな顔をしてる。ちらりと横目ですぐりんを確認すると、彼は複雑そうな目でふたりを見ていて。
かいくんは……何考えてるかわかんないなぁ。
「忘れてねえよ。昨日は、」
「いい! 言わなくていいから黙ってて!!」
顔を赤くして、まつりんの口を手で塞ぐ雫ちゃん。
その仕草はぼくから見てもかわいいんだから、きっと彼女のことを好きな相手から見れば、それはもう可愛くて仕方ないんだろう。
「いやぁ、若いっていいな。
高校生なりたてか。3つも下だってさ、左助」
「ジジくせえこと言うんじゃねえよ遊佐」
「よかったじゃん。心配してたんでしょ?
まーちゃんが変な女に引っかかってるんじゃないかって」
「見る目はあったみてえだな」