【完】黒蝶 -ふたりの総長に奪われて-
ぴたり。越が立ち止まるから、必然的にわたしも立ち止まる。
わたしを見下ろす越の瞳が細められて、ドキドキした。……や、やばいこと、言った?
「好かれてばっかもウザいけど。
……好かれないなら好かれないでムカつくな」
「え?」
「分かんなくていいよ。
鼓とは違うけど、雫も大概馬鹿っぽいし」
「っ、」
ば、馬鹿っぽいって……!
さすがにひどくない!?と反論しかけたわたしが付けていたマスクをおろし、越が綺麗な指先で顎を掴む。そして。
「ま。
……雫にも分かるように言うならこういうこと」
冷たいくちびるが、わたしのくちびるに触れた。
え。いま何された?
っていうか、"言うなら"って言ったくせに、言葉で伝えてくれてないじゃん……なんて、半ば現実逃避のようなことを思いつつ。
「な、んで?」
「言ったじゃん、気に入ったって」
「そうだけど、」
「……嫌だったなら謝るよ」
小さな声に、首を横に振った。
すごくびっくりしたけど。嫌だったわけじゃない。