【完】黒蝶 -ふたりの総長に奪われて-



「はっ、ンなもん、忠告されるまでもねえだろ」



吐き捨てて、まつりんは2階へと上がっていく。

それを何も言うことなく見送った左助さんと千鶴さんは、「じゃあ帰るわ」と稜くんに告げた。



「もう帰るんですか?」



「世代交代した俺らがいつまでも居座る場所でもねえしな。

……稜介。あいつのこと頼んだぞ」



「……はい」



「ま、言わなくてもお前はやるだろうけど。じゃーな」



ふたりがあっさり倉庫を出ていって、空気は徐々に飽和していく。

けれどぼくら幹部の中にだけは、どうしてかよくわからない(わだかま)りみたいなものが残った。




──たしかに、

7代目はしずくんと出逢ってから、大きく揺れてる。



「……俺1本吸ってから行くわ」



「あ、快斗、」



「りょーくん。上行こうよー」



かいくんが外に出ていくのを稜くんが引き止めようとしたけど、かいくんだって何も考えてないわけじゃないと思う。

止めるのは野暮だとその稜くんを引き止め、ふたりで階段を上がる。



「……稜くん。

ごめん、しずくんに、ぼくらのこと話しちゃった」



「そうなの? ……雫ちゃん、何か言ってた?」



< 221 / 295 >

この作品をシェア

pagetop