【完】黒蝶 -ふたりの総長に奪われて-
「はっ、ンなもん、忠告されるまでもねえだろ」
吐き捨てて、まつりんは2階へと上がっていく。
それを何も言うことなく見送った左助さんと千鶴さんは、「じゃあ帰るわ」と稜くんに告げた。
「もう帰るんですか?」
「世代交代した俺らがいつまでも居座る場所でもねえしな。
……稜介。あいつのこと頼んだぞ」
「……はい」
「ま、言わなくてもお前はやるだろうけど。じゃーな」
ふたりがあっさり倉庫を出ていって、空気は徐々に飽和していく。
けれどぼくら幹部の中にだけは、どうしてかよくわからない蟠りみたいなものが残った。
──たしかに、
7代目はしずくんと出逢ってから、大きく揺れてる。
「……俺1本吸ってから行くわ」
「あ、快斗、」
「りょーくん。上行こうよー」
かいくんが外に出ていくのを稜くんが引き止めようとしたけど、かいくんだって何も考えてないわけじゃないと思う。
止めるのは野暮だとその稜くんを引き止め、ふたりで階段を上がる。
「……稜くん。
ごめん、しずくんに、ぼくらのこと話しちゃった」
「そうなの? ……雫ちゃん、何か言ってた?」