【完】黒蝶 -ふたりの総長に奪われて-
「別に納得しろなんて言ってねえよ」
「は? そうにしか聞こえねえだろ」
「それはお前が、」
「ふたりとも……!
ああもう、咲耶! 快斗呼んできて!」
ひとりでは止めきれなかったらしい。
ぼくよりも背が高くて力も強いかいくんの方が、たしかに仲裁には向いてる。呼びに行こうと部屋を出るより早く、「呼ばなくてもいるっての」と凝った首を回すようにしてかいくんが部屋に入ってきた。
「どうせまた雫のことだろ」
はあ、とかいくんはため息をつく。
そしてふたりを止めるのかと思いきや、なぜかしずくんにおもむろに近寄ったかいくんは。
「お前ら、他にすることがあんじゃねーの?」
しずくんの肩を掴んで後ろを向かせ、彼女の綺麗な髪を持ち上げる。
その瞬間に晒された後ろ首に残った、赤い痕。
彼女はハッとしたようにそれを手で押さえて隠したけれど、全員がばっちりと見てしまっていた。
……キスマーク、だ、よね? 今の?
「は? それ誰にされたの、雫ちゃん」
「え、っと……」
すぐりんに問い掛けられた彼女は、あからさまに目を逸らす。
昨日はまつりんと一緒だったけど、まつりんのその顔を見る限り、付けたのはまつりんじゃないよね?
「別に、正直に言えばいいんじゃねーの?
"快斗くんにされました"って」