【完】黒蝶 -ふたりの総長に奪われて-



だめだこの人、火に油注ぎに来てる……!!



「あ? 快斗お前、」



「おかしいと思わなかったのかよ。

一昨日の昼間。──俺と雫、来なかっただろ?」



幹部室の空気が、止まる。

たしかに一昨日、しずくんとかいくんは倉庫に来なかった。でもそれはふたりとも予定があると言っていたからで、連休中はみんな来ない日があって当然くらいの感じだったから、誰も不審に思わなかった。



まさかふたりの予定が、"同じ"予定だなんて。



「違っ……違うってば!

たしかに快斗と一緒だったけど、それは家庭の用事で手伝って欲しいって頼まれたからなの……!ちょっと快斗、話ややこしくするのやめてくれる!?」



慌てて。

面倒なことになったと気付いたらしいしずくんが弁明するけど、たぶんみんなの苛立ちの矛先はそこじゃないと思うんだよね。




「何を頼んだら"首に痕がつく"ような用事になんの?」



「さーな。

俺、首だけに付けたなんて一言も言ってねーけど」



「っ、快斗!!」



「んな怒んなよ。冗談だっての」



真っ赤になって噛み付く彼女をかいくんは適当にあしらってるけど、冗談に見えるのは半分だけだ。

なんとなくかいくんの気持ちも分かってたけど、まさかこのタイミングでカミングアウトなの?



っていうか何したら首に痕つくことになるの?

意図的にかいくんがやったんだよね?



「っ、ほんとに何も無いわよ」



< 224 / 295 >

この作品をシェア

pagetop