【完】黒蝶 -ふたりの総長に奪われて-
下っ端の子たちが、幹部みんなに懐いてることは知ってる。
快斗に絡まれても、嫌な顔をしてる子はいない。それは間違いなく快斗の人柄のおかげで、彼等はいつも楽しそうに笑ってる。
「本当に、何一つ親の話を聞かないような息子だったら。
こうやって呼び出されてた時、帰ってくることもしないはずですから」
燃えるような赤い髪。
本当に。快斗には、よく似合ってると思う。
「………」
シン、と部屋が静まり返る。
……やばい、さすがにご両親相手に生意気過ぎた?
「雫さん」
快斗のお母様に、名前を呼ばれる。
内心焦りながら「はい」と冷静に返せば、彼女は予想に反してくすくすと笑った。
「快斗のこと、よく見てくれてるのね。
……あなたのような人が快斗のそばにいてくれるんだって思ったら、なんだかちょっと安心したわ」
「、」
「まあ確かに、あなたの言う通り、心配でよく干渉しちゃうのよ。
この子ね、好きなことばっかりして、自分のこと自分から全然話さないんだもの」
困ったような、彼女の表情。
快斗は「わざわざ話さねーだろ」とボヤくけど、そこらの人並み以上に、そうやって自分のことを話すのが苦手なだけなのだ、快斗は。
「でも、今日こうやって快斗がはじめて"彼女"だって連れてきてくれて嬉しかったの。
たしかに、何も考えてないわけじゃないんだものね」
「そうですよ。
恥ずかしいから自分のこと話せないだけですよ」
「誰が恥ずかしいって?」