【完】黒蝶 -ふたりの総長に奪われて-
ムッとした様子の快斗が、わたしの頭を軽く小突く。
当たったけれどほとんど痛みを感じないそれにだって、気を遣ってくれていることはわかる。ただ恥ずかしがり屋で、不器用なだけで。
「もう高校生だものね。
……自分のことは、自分でできるのよね」
「だからそう言ってんだろーが」
「わかった。……でもやっぱり心配だから、あなたの為を思って、ひとまずは成績を見て考えるわ。
現状維持できるなら口を出さないけど、もしあまりに落ちるようなら口出しすることにします」
「、」
「あと、時々メッセージだけでも送ってちょうだい。
こっちから送ったら、あなたまたうんざりするでしょ?」
……そして快斗のお母様だって、快斗の気持ちが分かってないわけじゃない。
お互いに伝わってはいるのに、譲れないことだって多少はあると思う。
「……わーったよ」
「よかった。
もしそれがダメなら雫さんにお願いして、定期的に快斗の話を聞かせてもらうところだったわ」
「やめろ、ンな恥ずかしいことさせんじゃねーよ」
「お父さん、あなたもそれでいいわよね」
「……ああ、私は構わないよ」
やわらかな声色に、ホッと胸を撫で下ろす。
よかった。……言い過ぎたかと思ったけれど、言いたいことはちゃんとふたりに伝わってくれたと思う。
「あ、ねえ、雫ちゃん。
よかったら快斗の昔の写真でも、」