【完】黒蝶 -ふたりの総長に奪われて-
出してもらった紅茶にようやく口を付けていたら、快斗のお母様からそんな提案をされる。
快斗の昔の写真? ……なにそれ見たい。
「ぜひ、」
「あ? ダメに決まってんだろーがよ。
つーか、何が"雫ちゃん"だ。仲良くなってんじゃねーよ」
「ええ……見たいのに」
「ダメだっつの。ほら、お前はこっち」
「あらあら。
わたしたちのことは気にしなくていいから、ゆっくりして行ってね」
先に立ち上がった快斗に手を引かれ、つられるようにして立ち上がる。
ご両親に見送られ連れて行かれた先は2階。……快斗の部屋だ。
「写真くらい見せてくれたっていいじゃない」
床に座り、隣の快斗にムスッとしながら告げると、彼はさっきと同じようにわたしの頭を小突く。
それから「なにマジで気に入られてんだよ」と小さくため息をついた。
「なによ、
彼女として連れてきたなら満点の対応でしょ?」
「あーそーだよ。文句無しだわ」
そう言うくせに、文句ありげな表情。
じっと見つめれば、先に目を逸らしたのは快斗。
「お前さ、」
彼が、口を開きかけたとき。
突然ポケットの中で震えたスマホに、ハッとして手で探る。それから相手を確認すれば、画面に表示されているのは『ハルちゃん』。