【完】黒蝶 -ふたりの総長に奪われて-
俺から見たら、そりゃもう越の雫ちゃん溺愛っぷりは相当なもの。
特に俺なんかとのやり取りとの温度差ひどいで?冷たく接してるようで、雫ちゃんにはめちゃくちゃ甘い。ふたりっきりになったら中毒死しそうなぐらい甘いんとちゃう?……いや知らんけど。
「あとな、ずっと気になってたんやけどその指輪なに?」
「その遠回しな言い方こそ何?」
「雫ちゃんとのペアリングやろそれ!?!?」
だって家帰ってきてからわざわざ嵌めたやん!
さっきまで瑠里と一緒やったから嵌めてへんかったやん絶対!そのバカ整った顔にシルバー似合うな!
「雫はペアなの知らないけどね」
もう入籍でもなんでもしてしまえ。
それ直接雫ちゃんに言うたらよくない?なんでわざわざ本人おらんとこでやろうとすんの?アホなん?
「……で、そんな話はおいといて。
昨日一日、放っていった瑠里の様子は?」
「……急に真面目な話せんといて」
心臓に悪いわ。
ようやく俺も炭酸水を口に含んで、嚥下する。
しゅわしゅわと気泡が喉の奥で弾けて、ぴりぴりと細かい痛みが走る。
……越も雫ちゃんも両想いなんやから、それでええやんって、俺は思うねんけど。
「越が思ってる通りやで。
帰ってこないの知った途端にヒステリック。んで、どうせ女のところやって喚き散らすし、ヤバい思て全部刃物隠したんやけど、カッターの替刃隠し持っとったわ」
「……切った?」
「ケースから出す前に無理やり奪い取った。
どれだけ泣き止ませるの大変やったとおもてんねん」