【完】黒蝶 -ふたりの総長に奪われて-



宣言通り、越と東さんは5分くらいで戻ってきた。

他の誰かに話し掛けられるんじゃないかとすこし不安だったけれど、その間はずっと鼓がわたしの話し相手になってくれていた。



「お。帰ってきた。どーなったん?」



「別に出入りさせても構わないってさ」



「は!? 東さん、ほんまにええの!?」



「うん、俺が許可した。

……だからってお前ら、好き勝手に女連れ込んだら怒るから」



……いいんだ。ダメそうな雰囲気だったのに。

もしかしたら、越が何か言ってくれたのかもしれない。何か言ってもらえるほど、信頼の築けた関係なんかじゃないけど。



よかったねと頭を撫でてくれるそのぬくもりだけは、本物だと思うから。

その温度に触れてみたいって、ヨコシマな感情が顔を出す。




「なに? 物欲しそうな顔して」



「んなっ……」



「まあ冗談だけど。

……雫、このまま朝まで帰らなくても平気?」



完全に越のペースに持っていかれてる。

けれどそれを嫌と思うこともない。こくんと頷いたわたしの髪をひと房指に巻き付ける越の姿は、やっぱり到底同い年には見えなかった。



「じゃあ、ここにいなよ。

東さんの許可も出たことだし。改めて説明してあげる」



「うん、」



鶴木(つるき) 東さん。

俺ら朝顔の、6代目の総長だよ」



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