【完】黒蝶 -ふたりの総長に奪われて-







「っ、ケンちゃんの大バカ!! もうしらない!!」



「ちょっ、ハル……っ」



──階下から、ハルのバカでかい声が聞こえてきた。

それと同時に、幹部室の中の全員が一瞬目線を合わせる。ハルと兼が言い合うのはよくあることだが、結構ガチめの声が聞こえた。何したん。



「っうわぁん、雫ちゃんんんんっ」



「どうしたのハルちゃん」



バン!と勢いよく開く幹部室の扉。

そこから飛び込んできたちっちゃい塊は、一直線に姫の元へ向かう。ぎゅっと抱きついて顔を見せもしない。



そんなハルに無表情で舌打ちしそうな越と。

目線はスマホだが、耳は傾けている静。




「ケンちゃんがハルの前髪しっぱいしたぁ……っ」



「……、切ってもらったの?」



「っ、だってケンちゃんが自信あるって言ったもん!」



ンなアホな。

兼のその一言はいちばん信用ならんやろ、と思ったのは俺だけやないと思う。たぶん全員思った。兼の自信あるっていうのは過信なだけや。



「ハルっ。ごめんって」



「ケンちゃんなんてきらいいいぃ」



兼の実家は美容室やし、本人も美容師志望。

それ故に信じたんかもしれんけど、無理やろ。美容師って国家資格やねんから、そこらの素人ができるもんちゃうって。



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