【完】黒蝶 -ふたりの総長に奪われて-
「ふふふーん」
「なんや、ハル今日はご機嫌やん」
「雫ちゃんの幸せはハルのしあわせだもーん」
……ああ、昨日越が雫ちゃんに指輪渡しとったもんな。
ハルがその調子やってことは、雫ちゃんは指輪を喜んでたらしい。そりゃそうか。雫ちゃんも越のこと好きやしな。
「ねぇねぇ静、今日の夜ひまぁ?
いっしょにラーメン食べに行こうよぉ」
綺麗に塗られたキラキラの爪を見つめて、ハルが言う。
ラメが多く入ったそれはハル曰く「マグネットネイルだけど?」らしいけど、生憎俺らは女性の美容に疎いから分からん。雫ちゃんおらんし。
つうか、別に俺らも守ってへんけど、ハルの校則破りすごいな。
髪は許容されてるけど、ネイルってダメやなかった?
「お、ハルがラーメン食べに行くとか珍しくね?
しかも夜とか普段行かねえじゃん。俺も行く!」
「ケンちゃんは誘ってないよぉ」
「……どうせ鼓と越も行くだろ」
「みんなでご飯とかダルいぃ」
とか言いながら全員で行くんやろうな。
文句の尽きない連中やけど、みんなわがままやけど、朝顔が好きなことには変わりない。
「……全員で行くなら雫に写真送っといてやんなよ。
でも鬱陶しいから俺の顔はうつさないでね」
越の面倒なリクエストにも、ハルは「えっちゃんソロ写真撮ろ」なんて言い返してるし、聞く気なし。
普段撮ることの無い全員揃ったそれを受け取った俺らの姫からの返信は『みんな大好き』で。──俺らはきっと、その想いでつながってる。