【完】黒蝶 -ふたりの総長に奪われて-
さらさらの黒髪に、黒縁メガネ。
こんな人でも入ってたりするのね、暴走族って。しかもトップだなんて。イメージは全く湧かないけど、喧嘩強かったりするのかな。
「よろしく、雫ちゃん。
夜中でほぼ幹部が帰っててさ。副総長はいるんだけど、人見知りが酷くてほぼ部屋から出てこないし、たぶん女の子は余計ダメで」
明季って名前だけ覚えといてやって、と。
優しく笑ってくれる東さん。さすが総長というかなんというか、すごくみんなのお兄ちゃん感がある。
「で、そもそも関東にはいくつか暴走族のチームがあるんだけど。
北側は俺ら朝顔、南側は彼岸花っていうチームがトップを務めてる連合っていうのがあって」
「れんごう……?」
「まあ、北と南それぞれのチームを纏めて呼ぶ言い方かな。
なんか、そもそもの生まれは、仲が良かった北と南の初代がどれだけ自分のチームを育てられるか、って競って作ったらしいけど?」
……暴走族ってそんな感じなんだ。
そんな"あ、チーム作って競おう"みたいな感じで出来ちゃうんだ。
「それで、北と南は一応それを引き継いで敵対してる。でも3年に1回の世代交代はお互い絶対だって決まってるからね。
彼岸花も今は6代目が仕切ってるはずだよ。来年、東さんが高校卒業すると同時に、朝顔と一緒で向こうも総長を新しいヤツに引き継ぐ」
「へえ……」
「で、その総長含め、次の幹部に選ばれる確率の高いヤツが幹部候補って言われとる。
俺とか越はその幹部候補で、今夜中やしおらんけどあと3人おるで」
なるほど。
つまりは越も鼓も、7代目の候補ってことらしい。
なんとなく理解出来てうなずくと、また詳細は追々教えてくれるようで。
幹部や幹部候補についても、また顔を合わせる時に紹介してくれるみたいだ。
「ふぁ、さすがに俺はねむたいわ。
そろそろ帰るけど越と雫ちゃん帰らんの?」
「ん。雫が帰りたくなさそうだからいるよ。
……さすがに雫だけ置いて帰るわけにもいかないし」