【完】黒蝶 -ふたりの総長に奪われて-
「……どうした?」
どのくらい、時間が経っていたのかも分からない。
声を掛けられたことに気づいて顔を上げたら空は真っ黒、繁華街の灯りが煌々と輝く。その眩さに目を細め、目の前の人物を見つめる。
「だれ、」
綺麗な顔した、男の子?
……ハルと、年齢はおんなじくらいかな。
「俺は、」
「静? なんか見っけたの?」
「ああ、ちっちゃいヤツ」
……しつれいな。
たしかにハルはそこらの人に比べたら、身長低くてちっちゃいけど。初対面で普通そんなこと言う?
文句を言ってやろうと思ったのに、言葉が出てこなかった。
静、と呼ばれた男に近付いてきたもうひとりの男が、ハルが生まれてから見てきた人間の中で、最も綺麗な顔をしていたから。
……う、わ。なにその綺麗な顔。
「ほんとだ。そこで何してんの、ちっちゃいの」
「……ハルちっちゃくないもん」
「子どもだろ、制服だし。
もう23時だけどいいの? 完全に補導時間だけど」
え。
やば、もうそんな時間? ……、っていうか。