【完】黒蝶 -ふたりの総長に奪われて-
「ハルだけじゃなくない?」
そっちの綺麗な顔の人は知らないけど、少なくとも目の前のこっちはハルと年齢変わんないでしょ。
仮に年上だとしても、高校生だとしたら補導対象だろうし。
「俺らはいいんだよ。
……どうすんの? 俺らについてくる?それとも、ここに座り込んで、ポリ公が尋ねてくんの待つ?」
「………」
「ついてきたら、話ぐらいは聞いてやるよ」
初対面の人間に、そんな話を持ち掛けてくる人間に、ロクなヤツなんているわけがない。
でもここで座り込んでたって、話し掛けてくるのは意識もなさそうな酔っ払いか、この男の言う通り、警察くらいだ。
……なら、ついてく方がマシかもしんない。
「……ついてく」
「ん。名前は?」
「ハル」
「フルネームは?」
「……中津 遥人」
名乗りたくない、嫌いな本名。
けれどそれを聞いてきた男は、立ち上がったハルのことを見下ろしながら、何か納得したように「ああ、」と零して。
「りょーかい、ハルね」