【完】黒蝶 -ふたりの総長に奪われて-
「お。おかえり越、静。
……なんや? ちっこいの連れてるやん」
「東さんと話してくる。
なんか適当な服、そこのちびっ子に渡しといて」
「越の服でええの?」
「良いわけないだろ」
言いながら、越は二階に続く階段をのぼっていく。
……おもってたよりも、中は綺麗。っていうか、ハルと同年代ぽい男の子が、いっぱいいる。
「そんなん言われてもなぁ。
あ、これとかええんちゃう? ちびちゃん、名前は?」
独特な関西弁と、明るめの茶髪。
チビと連呼してくるのはムカつくけど、言われたとおりクローゼットらしきものを漁って、一着の服をハルへ差し出した。
「……ハル」
「ん、ハルな。
そこにボディシートあるさかい、好きに使って服着替えたらええわ。人目気になるんなら、その更衣室使ってええよ」
……なんでこんなところに更衣室?
更衣室というにはあまりにも簡易的な、棚と棚の間に突っ張り棒でカーテンをつけたものだけど。
ひとまず言われた通りに着替えようと、お礼を言って服を受け取る。
更衣室で身体を拭いてから着替えたそれは、サイズが大きすぎるプルオーバーパーカー。おかげでズボンを脱いでも何の問題もないくらい、丈が長い。
「着替えたか?
……あ。ハルが着ると完全にワンピースやな」
「……鼓、遊んでるだろ」
「人聞き悪いこと言わんといてや静。
女の子みたいな格好させようと思ったわけではないんやで決して。うん。そんなことは無いんやで?」