【完】黒蝶 -ふたりの総長に奪われて-
いま夏休みだから学校もないし、と。
越の言葉で、急に現実が返ってきたような気がした。それが怖くて、思わず越の服をそっと握る。
「あー……やっぱり帰ろうか。
ここにいても気疲れしそうだし、ウチおいで」
顔を覗き込んでくる越の表情が優しい。
いいの?と聞いてせっかくの親切心を踏みにじるのが嫌で、素直に頷いた。
「……手出さないでね、越」
「何言ってるんですか、東さん。
俺は来る者拒まず、去るもの追わず主義なので」
「よく言うよ。執着心強い方なのに」
呆れたような東さんの声を、気にした様子もない越。
じゃあね、と東さんに見送られ、帰るらしい鼓と3人で倉庫を出ると、途中まで同じ道のりを歩く。
「まさか越が持ち帰るとは思わんかったわ。
しかも東さんまで、出入りしてええって言うとか」
「あの人も、
拾ってきた猫を見捨てられないタイプだからね」
「大人しく家猫になってくれるんやったらええけどなあ。
……まあ、男だらけより華がある方が俺は嬉しいし、俺は雫ちゃんのこと歓迎しとるけど」
「そうやって好感度上げてんのサムいよ鼓」
「は!? そんなことしてへんわ!」
「ふふっ」
仲良さそうだなぁ、ふたりとも。
言ったらふたりとも否定しそうだから、言わないでおくけど。