【完】黒蝶 -ふたりの総長に奪われて-



鏡越しに、待合席のソファに座る面々が見える。

みんな兼の親御さんと知り合いっぽいし、ハルたち以外に誰もいないからいいけど、うるさい。特に兼。やかましさが見た目に出てる。



「俺、育成ゲーとか苦手やもん。

アクションで育つならまだしも、パズルゲーやし余計に向いてないと思うわ」



「なんで兼のためにスマホの容量割かなきゃなんないの?」



「っ、おまえらってやつは……!!」



騒がしいし、やかましいし、うざくてめんどくさいし。

……でも嫌じゃないんだよね、ふしぎと。



「きみも、兼と同じ朝顔のメンバーなのかい?」



だからこそ。

施術前にスムーズに兼のお母さんと入れ替わった兼のお父さんにそう聞かれて、口ごもった。……朝顔って、昨日の、あれ。




「おっちゃん、ハルはまだ誘てへんのよ。

どうせ嫌がるやろうから、望み通りとびっきり可愛くしてやったら気持ちも変わるんちゃうか?って越が」



「お前はなんで言わなくていい事まで言うの?」



「え?

だってそんなことせんでも、ハルずーっと嫌がる素振りないのになぁおもて」



「っ、」



見透かされてる。

それを言い当ててきたのが鼓なのがものすごく釈然としないけど、その言葉は当たってる。



「そ? じゃあ入ればいいんじゃない?」



──ああ。

人生って、案外優しく出来てるのかもしれない。



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