【完】黒蝶 -ふたりの総長に奪われて-
「ねえ二乃。今日、夜食べてかない?」
「まじ? タダ飯?」
「買い出しの荷物持ち付き合って」
「しゃーねーな。付き合ってやるよ」
うん、やっぱり気楽でいい。
突拍子のないこともしないし、落ち着きがあるし、ちょっと口が悪くて面倒くさがりなところを除けば。
「タダ飯望むほどお金に困ってないでしょ」
わかりやすくため息をつくわたしに、
二乃はフッと嫌味もなく口角を上げた。
「なー雫。せっかくだから寄り道してかね?」
「どこ行くのよ」
「服でも見に」
「……まあいいけど」
ひとりでなら近くのスーパーで済ますけれど、せっかく二乃が来ているからと、すこし離れたショッピングモールまで足を伸ばした。
……のが、二乃の物欲に刺さったらしい。
食品売り場がある一階なんて見向きもせず、エスカレーターをのぼる二乃。
まあ、元々二乃とふたりで出掛けることなんてたまにあったし、退屈じゃないし。
「コレとかどうよ。良くね?」