【完】黒蝶 -ふたりの総長に奪われて-







「おはようまつり」



「おはよう」



週末。待ち合わせでいいと伝えたのに、マンションまで迎えに来てくれたまつり。

エントランスでいつものように待っててくれている彼に小走りで近づく。綺麗な顔ですこし微笑んだかと思うと、手を引かれてその腕におさまった。



「……まつり?」



「ん」



なんか……なんだろう。

犬、じゃないし、うん、そう、猫?みたいな。



首にすり、と頭を寄せてくるところが、甘えてくる猫みたいだ。

自然とまつりの柔らかい髪を撫でると、「行きたくねえな」とボソッとこぼす。




「え、行きたくないの?

なんかごめんね、誘っちゃって」



「……いや、そうじゃねえよ」



「……?」



「このままお前とふたりきりで過ごしたいって意味だよ。

出掛けたくねえなんて言ってないだろ」



どことなく拗ねたように、まつりがわたしを見つめる。

ふたりきり、という言葉にそこはかとなく色気を隠されたような気がして、じわりと頬が熱を持った。



「……っ、そういうのだめ、って言ってるでしょ」



両手で、まつりの胸を押し返す。

これを狙ってやっているのか、自然にできてしまうことなのか分からないから困る。



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