【完】黒蝶 -ふたりの総長に奪われて-
「そういうの?」
「そういうの」
「付き合ってるのに?」
「……それとこれとは別なの」
っていうか、誰かに見られたら困る。
押し返す力を強くしてまつりに離れてもらうと、不服そうにしながらも離れてくれた。その代わりとでも言うように、手を握られたけど。
「手、離すなよ」
子どもに言い聞かせるようなそれに、すこしだけくちびるを尖らせる。
やっぱり子ども扱いしてるじゃないの。
「……ああ、そうだ」
「うん?」
「今日は一段と可愛い」
「っ、」
不意打ち……!
なにそれ、さすがに"一段と"なんて言われたら照れるんですが……!
「べ、つに、ちょっと化粧したくらいよ……」
そりゃあ、越と出掛ける時ほどじゃないけど、さすがに身だしなみは整えてる。
まつりのためにじゃなくて、自分のために。でもそう褒めてもらえるのは、わたしも嬉しい。