【完】黒蝶 -ふたりの総長に奪われて-
「だから言ってるだろ。一段と、って」
「まるで普段から可愛いと思ってるような口ぶりね」
「思ってるからな」
またこの人はサラッと。
越がたまに零す同じ言葉にときめくけれど、こうやって何度も繰り返されて悪い気はしない。それに。
「雫」
本当にそう思ってくれてるのだと伝わるくらいの熱量でわたしをずっと見つめてくれるから、なんだか浮かれそうになってしまう。
1ヶ月以上その熱にあてられて、何かが狂ったんだろうか。
今日も指にはシルバーリング。
わたしが朝顔の姫であるということの誓い。
繋いでない方の手でそっと髪を撫でられて、近づく距離に、まぶたが落ちる。
くちびるに、ほんの一瞬触れるだけのキス。
「その顔、他のやつの前でするなよ」
「な、に、その顔って」
「物足りなさそうな顔」
「……っ」
ああ、もう。
この人をトラップにかけるなんて、難易度高い。
「楽しみは後に取っとくとして。
……そろそろ出掛けるか」