【完】黒蝶 -ふたりの総長に奪われて-
いくらノコノコ着いてきたって、それは無理。
声を上げたわたしに「じゃあ入りな」とバスルームを案内してくれた越は、好きなように使っていいからと言って脱衣所を出る。
「雫が入ったら、そこに着替え置いとくよ。
さすがに貸してやれる下着はないからそのまま着てね。履かない付けないって言うならそれもそれでアリだけど」
「っ、へんたい」
「知ってる」
パタンと、扉が閉まる。
服を脱いでる最中に入ってくるんじゃ?と気にしたけれど杞憂だったようで、そのままさっさと脱いでお風呂に入った。
誰もいない、越の家。
ご両親は?と聞いていいのかもわからなくて、聞けなかった。このマンションで暮らしてるってことは、少なからず大人が関わっているとは思うけど。
わたしだって、あんまり聞かれたくないし。
そういうのってたぶん、安易に触れるものじゃない。
「……シャワー、ありがとう。お先です」
「ん、おかえり」
お言葉に甘えてシャワーを終え、下着の上から用意されていた大きめのTシャツを着ると、だぼだぼ。
細身の越が着るサイズでもないような気がするけれど。
明かりがついていたリビングで、越は本を読んでいた。
それを栞も挟まず閉じると、手招きされて彼に近づく。
「かわいい」
「っ、」
頬を指で撫でられて、背中で何かがそわそわする。
目を逸らしたいのに、逸らせなくなる。