【完】黒蝶 -ふたりの総長に奪われて-



繋いだ手を、優しく引かれる。

いつも通りに話そうとするけれど、何度も脳裏にさっきの言葉が蘇って、ところどころ変だったと思う。



「うーん……こっちの方がいいかな。

でも黒より青の方が似合いそうだし、」



だって、実際に思ったことだったから。

物足りない、って、そう感じて。



そのまま顔に出てしまっていたのなら、めちゃくちゃ恥ずかしいけれど。

まつりに絆されてしまうなんて、良くない。



「可愛い彼女さんですね」



──お目当ての、まつりのピアス。

訪れたショッピングモール内のアクセサリーショップで吟味しているのだけれど、店員さんのお世辞にも「はい」なんて答えているまつりは放っておく。



顔が綺麗だし、似合うものが多い。

別に本人に選んでもらってもいいんだけどなぁ。




「雫」



「うん?」



「コレは?」



まつりが指さすショーケースの中をのぞき込む。

水色の、しずく型のストーンピアス。アクアマリン製らしいそれはめちゃくちゃ綺麗で、間違いなくまつりに似合う。



今見たピアスの中で、絶対に一番似合う。



いや、うん。自惚れかもしれないけど。

誰がどう見たって、"しずく型"なのよね。



分かりやすく恥ずかしくない?

いや、自惚れなら申し訳ないんだけど。



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