【完】黒蝶 -ふたりの総長に奪われて-
「ダメだったか?」
「や、ダメとかじゃ……」
「じゃあコレで」
即決しちゃってるし。
え、わたしの考え過ぎなだけ……?
「ありがとうございまーす」と店員さんがケースから取り出し、レジへ持っていくのを追い掛ける。
まつりは自分で払う気だったようだけど、それは丁重にお断りした。わたしが付け替えて欲しかっただけだし。
「あの辺座って付け替えましょ」
お会計を終えてお店を出ると、近くの空いているベンチを指さす。
いつの間にか離れていた手をするりとまた握られて、甘えるようなそれに笑みが漏れた。
「ん」
ベンチに座って、買ったばかりのピアスを取り出す。
どうやら勝手に付け替えてもいいらしいから、その耳からようやくオレンジのストーンを外した。
「やりにくいからそんなに見つめないでよ」
「気にするなよ。付け替えるだけだろ?」
「……なんか恥ずかしいじゃない」
彼は頻繁にわたしのことを見つめてくる。
それくらい大事に思ってくれてるのかもしれないけど、ついつい気になっちゃうし。
新しいピアスのキャッチを外していたら、まつりの腕がわたしの腰を引き寄せる。
……ちょっと。人前で何してるんだこの人。